台風21号が太平洋に抜けて北上したとのこと。
吹きあられる強い風と強い雨で荒れた天候は嘘だったかのように、今日はとても静かだった。
今日は、というが、台風の影響によって、今日の朝にようやく帰ってこれた僕だった。
京都の方へ行く予定が終わり、帰るところだった。
阪急 十三駅で神戸線へ乗り換え神戸三宮駅に戻るところだった。
台風の影響にぶちあたることなくスムーズに帰ることができそうだ、と思っていた矢先のことだ。
車掌さんのアナウンスが車内に響く。
台風の強風の影響により線路内に倒木が発生、ということで運転が見合わせられる。
この段階では撤去され、すぐに進み出すであろうと予測していたが、予測とは裏腹に30分待っても、1時間待っても、同じアナウンスが続き、なかなか状況が進展しないまま、電車の中で閉じ込められているままだ。
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阪急に閉じ込められ中(^.^)
— 坂本匠太 (@bowsdesign) 2017年10月22日
どれくらいの時間が経ったのだろうか、進展しないまま立ち続けているのも少々疲れてきた。
トイレに行きたい人もいるだろうと、定期的に扉の開閉をされていたので退屈になってきたから、外に出てみることにした。
かれこれ1時間くらい閉じ込められてるんじゃーないかな。
— 坂本匠太 (@bowsdesign) 2017年10月22日
園田駅というところで停車していた。
はじめて降りた駅。
十三、塚口の次の駅。
改札付近ではどうしようもなく立ち尽くす人が氾濫していた。
暇なので降りたことのない駅を散策してみようと改札外を出てみたら長蛇の列。
タクシーの順番待ちだった。
タクシーも忙しそうだった。
僕もこれに並んで帰ることを考えたが、これに並ぶのは怠い。。。ということで、やめて散策を続ける。
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かえれまてん。
— 坂本匠太 (@bowsdesign) 2017年10月22日
散策も終わり、さて、どうしようか。
状況は進展しない。
動く見込みはいまのところない、ということだった。
タクシー乗り場の長蛇の列は増すばかり。
これをじーっと待っているのも怠い。
近くにすき家や居酒屋が開いていたが、先ほどたらふく食べてきたのでお腹は満たされている。
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こうやって旅は始まるのだ。#photo #photography #photooftheday #amagasaki #kobe #神戸 #尼崎 #写真 https://t.co/Z6az5W8oLW
— 坂本匠太 (@bowsdesign) 2017年10月22日
「歩いて帰ろうか。」
馬鹿は閃いた。
強風と雨が吹きれるこの危険な道を歩いて帰ることを思いついた。
google mapに目的地をセットしガイダンスをスタート。
google mapさんのガイドを道しるべに、慣れない道を歩き始めた。
少し歩いたところで、僕はすでに後悔していた。
待つか、タクシーに乗っていればな。。。
ただ歩くだけではなく、なかなかの強い風に吹き飛ばされないように、しっかり地を踏みしめて歩いていかなければいけない。
コートが風に煽られ、帆船の帆のようになって一切の風を真正面に受け、進行方向とは別の方に引っ張られていく。
しっかり結んだマフラーも何度もほどける。
ちょっと腹が立つ。
幾人もの小人にデコピンされるように、風で勢いのついた雨がペチペチと顔や手をはたき地味に痛い。
この地味な痛さが苛立つ。
風で折れた木が歩道を選挙している。
のぼりやゴミ箱、植木が歩道に散乱している。
信号が大きく揺れているし、傾いているのもあった。
工事現場の鉄の扉が倒れていたりした。
救急車た消防車、また職人さんも緊急出動して忙しそうだ。
そんな光景が次々に目に映っていくわけだが、今回の台風の凄まじさを身を以て知ることができた。
体感しなくてもやばいのは、わかるやん。。。とか思いながら。
そんなことを感じたり、思ったりしながら、目的地へ進んでいくわけです。
強い風に踏ん張りを利かせることにかなり体力を消耗させられた。
あとバランスを取るのにも。
小人のマシンガンデコピンも物理的ダメージは少ないものの、苛立ちという精神的ダメージは蓄積されていった。
だが次第にそんな些細なことはどうでもよくなってくる。
ただ目的地へ向かって歩くのみ。
足元に黒い得体のしれない物体が転がってきた。
風に煽られ転がってきた物体は、動きが異様で不気味だった。
隣を見てみると古い平家の廃墟が続く。
その窓に貼られていた気持ちの悪い大きく目をレイアウトしたポスターが気持ち悪くて、恐怖感が増す。
黒い物体というのは苗が入っていた小鉢。
ほっと胸をなでおろす。
背後から「ごーーーーーーっ!」と風が吹きあられる音が鳴り響く。
まるで大きな闇の中に現れた顔が僕を追いかけてくるようだ。
風に揺らされた木やものが薄暗い光に照らされているのが、モンスターのように見えて不気味だ。
コンビニや明かりがついているところがあると安心した。
しんどいなーと思ったら、突然後方から強い風が吹いて歩かなくても進むことができた。
応援されているのだ、と前向きにとらえたりとか。
こうやって物語であったり哲学であったりというのは生まれていくのだな、と感じる。
イヤホンの中で鳴っていた音楽が止まっていることに気付く。
音声案内もなくなっている。
携帯電話の充電が切れている。
こんなことは珍しい。
普段は2〜3日充電しなくても十分に維持できるから。
そうこうしていたら、馴染みのある風景が見えてきた。
西宮ガーデンズに辿り着いた。
足元がビジョビジョで気持ちが悪かったから、少し休憩していくことにした。
電車の状況を見てみるため、西宮北口駅まで行ってみた。
状況は進展しておらず、未だ電車は動いていないようだった。
その時の時刻は3時過ぎといったところ。
運転があるとしたら始発。
始発の時間になっても台風の状況が改善されていなければ、運転を見合わせるということだった。
駅内では、立ち往生している人が氾濫していた。
その人たちのために駅構内は解放されていたが寒い。
近くにコンビニがあるが、そこからカップ麺や、カップスープを買ってくる人がたくさんいた。
西宮北口駅の自販機はほぼ売り切れ表示。
しかもHOT。
切符券売機を机にしてスープを飲んでいる女の子がいたが、その光景が可愛くて少しキュンとなった。
座るところがなく、改札前にどっと座り込んだのだが、座り込んだらしまい。
また歩く気持ちが薄くなってしまった。
始発までまだ少々時間があって待つのは怠いが、なかなか体力的に疲れているから、始発の状況を待ってみることにした。
車両も解放されていた。
そこで時間を潰す人がたくさんいた。
シートをベッドにして寝ている人がいたが、気持ちはわかるがそれは違うやろ、とむかついたし、神経を疑った。
考えられへん!と。
車掌さんに乗車料金をこんなに迷惑をかけたのだから、ただにしろと怒っている人がいた。
それを見て、どういう考え方やねん。。。と憤った。
いやいや、台風くるって分かってたやん。
それにも関わらず、乗ったのだから覚悟の上でしょうに、と。
とまあ、そんなわけで貴重な体験をしたわけです。
ニュースで見たような光景が、目の前で繰り広げられていたわけです。
人というのは、普段あるものがなくなってしまうと、こうも無力なものなのか、と天災の影響力とはすごいものだと改めて実感したわけです。
そんなこんなで、始発は無事に出発。
神戸三宮までようやくたどり着きました。
プシューッと扉が開き、やっと帰れると重たい体を改札に向かったところ、お尻のポッケが寂しいことに気付いた。
財布を落とした。
場所は分かった。
先ほど座っていたシートだ。
閉まりそうな扉にかけこみ、自分が座っていたシートに向かったら、財布を見つけた方が、僕を覚えていてくれて、届けにいくところということで、手渡してくれた。
感謝です。
スムーズに終わることはなく、結局花隈駅に降り、改札から出るためにまた長蛇の列にならばないといけず、三宮駅に乗り込み、ようやく家に帰ることができたのでした。
振り返ってみると定期的にこういった状況になり、馬鹿な選択をして余計な苦労をするわけですが、僕にとってこういう出来事というのは、非常に大事な経験。
物質的に得られるものはないが、生きるうえで必要な見えないものというのは、たくさん得られることができるのだ。
ちなみに台風の語源は諸説ある。
台風を古く日本では、野分き(のわき)と呼んでいたそうだ。