雨が葉を打ち、雨が流星の如く、地を貫き、落下点から霧が立ち込めて、視界をぼやかす。
巣穴から顔を出した狐がゆっくりと姿を現し、地に溜まった天からの恵みにて喉を潤す。
雨の音、雨の風、雨のにおい。
雨の霧が野性を鎮め森のしばしの静寂を生む。
雨が頬をかすめる獣の目は理性が見え何やら不安そうだ。
珍しく足を折り腰を下ろしたあの獣は視界が悪くなった遠くを眺めている。
葉越しに見える空は生まれて幾週もの梅雨の空。
存在も定かではない故郷の香り。
葉の間から雨が目に刺さって、まだ明けねえなあ、と軽やかにぴょん跳ねてみせるのだ。
今日の作業用BGM
ばらの花