約束の時間が迫り、出かけようと靴を履き、扉を開けた。
朝の太陽の光が眩しく照らしてくるのだろう、と思っていたら、空は暗く、空気はどんよりしていて、雨がしとしとと降っている。
陰鬱な気分になりドアの前で立ち止まっていた。
傘に手をかけようとしたが、や、やっぱいいや、面倒くさい、傘は嵩張る、邪魔になるのだ、街中で傘をさしていたら気疲れする、とそのまま歩いて行った。
打ち合わせを終え、遠くに見える色とりどりの傘が上下に揺れているのを目で楽しむ。
その中にたまに右にくるくると、左にくるくると回転しているのを見ると微笑ましく思う。
しかし、あの中をかいくぐって行くのは、雨の日の陰鬱な気分のように重くストレスを感じる。
晴れの日は通る道を雨の日は大衆は選ばない道を選び歩きストレスを軽減させる。
何度も歩いている道だったが、久しぶりに歩く道だった。
特に大きな変化のない久しぶりの道を新鮮な気持ちで歩いていた。
パテを見にユザワヤさんへ寄ろうとアーケード街に入った。
(ヨシザワ、ヨネザワ、、、などと店名を勝手に変えて呼んでいたら本当の名前が分からなくなり、ここで少々時間を食ってしまった。。。)
前方からホームレスらしき人が、大きなフード付きのカッパのようなものを羽織、両の手に大きな荷物を携え、ゆるりゆるりと、ふらふらを体を左右に振りながら歩いていた。
とまあ、特に気にもせず景色を見ながら歩いていた。
すれ違ったときにその人の顔が視界に入った。
その目を見たときにぞくっとした。
フードの隙間から前を見る眼光はとても鋭く、身震いしてしまうほど強かった。
生きる、とはこういうことなのか、力強いオーラのようなものを纏っていたように感じた。
ユートピアを夢見て、人々は各々の思想や思惑を現実に落とし込んでいくも、なんとも滑稽でけったいな嘘の世界を嘘とも思わず何食わぬ顔をして日々を生きている。
あなたはどこへ行くのだ。
あなたにはこのまやかしの世界がどう見えているのだろう、いやどう見ているのだろう、と。
アーケード街の交差点のところで足を止めゆっくりと立ち止まり後ろを振り返り、彼の背中を追った。
ゆるりゆるりと、ふらふらとしていながらも、一歩一歩を踏みしめる足は力強かった。
そう、僕も生きなければならない。
家に戻るとどっと疲れが襲ってきた。
眠らなければいけない、と思って眠ろうとするが、最近一時間ほどで目を覚ましてしまうこともしばしば。
椅子にこしかけ寝ぼけ眼をこすりながら作業をしていた。
突然にあるコレクションの動画を見たくなって検索して見ていた。
すると携帯電話のホーム画面にSNSからのお知らせが表示された。
CHANELのデザイナー、カール・ラガーフェルドの訃報のお知らせだった。
ちょうど見ていた動画がCHANELのコレクションの動画だったので、少々動揺してしまった。
SS 2017
なんだか分からないが好きで、見終わった後にはなんでか分からないが涙ぐんでいる。
このコレクションでは僕の大好きな曲をベースに展開されていて、それだけで涙ぐんでしまう。
世界観やカメラワーク、その中をかけるモデルさんや演者さんが素敵で。
国内でも数件の訃報がニュースになっていた。
人の死、というのは悲しいものだ。
接点もなければ、同じ畑でもなければ、出会うことさえ、話すことさえ難しい偉大な方達なのだけれど、託されているのだろう、バトンを渡されたのだろう。
生きなければならないのだ。
今日の作業用BGM
ということでこの曲で締めくくろう。
Clouds Across The Moon – Rah Band
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