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date | 2017.8.29 イラストレーションと短編小説「荒野の果てで少年が見たものとは?」

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「荒野の果てに何を見たの??」
いつもこの時期になると、若者たちは村人たちに尋ねて回る。

「何を見たの??」
「登って自分の目で見てみろ。」
「登ったものにしか分からない。」

曖昧な回答で、僕の求めている答えをくれない村人たちに苛立ちを覚え、自分で見に行くことにした。
なんの整地もされていない荒れた道のり。
ぎざぎざした鋭利な岩を登ったり降ったり避けたり。
泥々になって、傷だらけになりながら、そこへと向かう。

先人たちが辿り着いて、そこから見えた景色というのはどんなものなのだろうか。
激しく乱れた呼吸とだるくなって支えきれなくなった体を雑に地面に落とし地面に転んだ。
呼吸が落ち着いてきたときに、ゆっくりと首を横に回した。
見えるのは、ただ太陽と険しい山々。
体を起こし、辺りを見回してみるものの、そこから見える景色というのは、特別なものはなく、いつも見ている景色にしか見えない。
辺りを気にしながら、ここで時間を過ごすことにした。
それでも見えてくるのは、羽ばたいていく鳥や、ゆっくりと動く雲、遠くに見える小さくなった人々の営み。
この苦行のごとき旅になんの意味があったのだろうか。

そこには自分が見る限り何も無いのだ。
何も無かった苛立ちを抱きながら帰路へ着いた。
怒りで理性を失って険しい道のりであることは既に忘れていた。
その苛立ちを村人にぶつけた。

「なにもなかった!なにもないじゃないの!」

村人はにっこりと微笑み「そうか。」と頷き、こう続けた。
「お前はまだ若い。お前にはまだ見えないのかもしれないな。」
「いずれ見えるようになる。そのときまで焦る必要はない。」

そんな曖昧な回答が余計に苛立ちを増幅させ、僕は家に帰った。
苛立ちを隠しきれず、ぴりぴりとした雰囲気を放っている僕とは違って、親や兄弟というのはいつも通り。
いや、いつもより穏やかで優しく感じた。
それが惨めに思えて、居心地が悪かった。

小さな頃、村人の多くも僕のように、登っては降ってを繰り返していた。
僕より大きい大人たちは何度も登り続けていた。
しかし、何度も登り続けた先人たちは、急にぴたりと登山をやめていく。

諦めてしまったのだろうか。
何も見えない、意味の無い行いに。
ただ、不思議なことにやめてしまった村人たちの雰囲気や表情が妙に柔らかく、活き活きとしているのだ。
何度となく見たこの景色をまた見ては、なにかを得たように帰ってくる。

僕には見えないもの。
苛立ちや焦りを糧に何度もこの道を行き来した。
でも、そこには「こたえ」など無かった。
太陽、空、山々、空気、自然。
この到達地点に立ち、見える景色に答えが無かったことに、幾度も苛立を覚えたが、日に日に薄れていき、今日はいつもの感覚と違った。

妙に清々しい。
自分に吹いてくる風が優しくて心地よくて、気持ちがいい。
苛立ちは消え、非常に心は穏やかだ。
ただ、そこには「こたえ」は無かった。

荒野の果てに イラストレーション

今日の作業用BGMは
My Chemical Romance / Welcome To The Black Parade

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