bow's Design(ボウズデザイン)

ぞうさんじょうろ 写真

日記「飯テロ」

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お店の店員さんがレジカウンターに入り、エプロンの紐を静かにぎゅっとしばり仕事を始める姿が目に入り、ごくりと息を飲んだ。
職人の所作、というのか、作業をしているときの立ち居振る舞いや、スポーツだとか、趣味にしても、無意識に発動する所作、というのは格好良い。
人の写真を撮ってみたいのだが、ポートレイトというよりも、日常的なありのままの姿を撮りたいと思う。

さて、自分はあまり食に興味が無い。
全くないことは無いと思うが、あれが食べたい、これが食べたい、特に無く、出てきたものなら嫌いなものはともかく、組み合わせや量などが不味くなければ、なんでも美味いと思うし、幸せの食卓になる。
一日一食十分であるし、量も適切が良い。(白米、これは欠かせない。美味い。)
自分の生活スタイルはの中で、机に張り付く多くの時間は夜間であり、夜明けまで続くし、場合によっては、そのまま出発することもある。

そんなライフスタイルの中で、夜中というのは「飯テロ」というものに出くわすこともしばしばで、つい菓子等やカップ麺等に手を伸ばしそうにあるものの、カップ麺であれば調理するのが面倒くさく、菓子等ならば取りに行くのが面倒になり、空腹のことはすっかり忘れてしまっていてそのまま時が過ぎる、というのが、それもまた毎日のことである。
どうしようもなく、カップ麺等や菓子等を食べたところ、これじゃない感が否めず、空腹は満たされるものの、何かが足りない。
この時食べたいものといったら、まさにこってりとしたラーメン、それにチャーハンをつけてがつがつと一気にかきこみたい気分ではあるが、カップ麺を作ることさえ面倒くさいのに、お店まで出向く気力なんてね。

そんなことを考えていたら、すっかり空腹のことは忘れて小鳥のさえずりが聞こえ、どうでもよくなるのだ。
さて、現在の時刻を見ると、丁度小腹が空く時間にさしかかっている。
今日は趣向を変えてこの空腹の時間を楽しんでみようではないか。
片方のモニターに写している音楽や映画を、飯の動画にしながらやってみようではないか、と思い、飯ばかりを集めた動画を探したところあったので、流してみた。

数々と流れてくる飯テロに、ごくり、と飲み込むも、よだれが溢れ出しそうになる。
僕の腹は雷鳴を鳴り響かせ、映像のそれを欲す。
なんとも心を乱せてくれるが、この動画、なんと残り10分もある。
ほお、上等ではないか、ならば、貴様の飯テロの嵐に、耐え抜いて見せてやろうではないか、僕の悪い癖が発動し、戦さ場へと変わり果てるのだった。
瞬き以外は目をそらさず。
この映像は視覚だけではなく、聴覚も刺激し、それらの感覚は臭覚をも覚醒させた。
あらゆる信号の嵐に脳は刺激され、腹に緊急発令を発信し、激しい雷鳴のごとく音を鳴らしたてる。
腹はみるみるうちに凹み、今にも背中にくっつくぞ!という状態である。
鳴り止まぬ飯テロに、ごくりごくりと喉仏をうならせ、空腹に空が滴りおちていく感覚が伝わってくる。

まったく、なんでこのような戦に参加することになったのか、後悔を抱きながら、残りの再生時間を確認したところ、あと1分ほどである。
油でからからと揚げる音、掬い上げられた揚げ物、ぷつぷつと油が踊り、光り輝く狐色の衣、さくっという音と、内部に伝わる咀嚼の音。
夏祭りの花火のフィナーレのような畳み掛け映像であり、よく分かっているではないか、心折れかけそうなとき、映像は終幕。
危うく負けてしまいモニターにかじりつきそうになってしまったが、この戦、僕の勝ちのようで、勝どきの時、えいえいおー!であった。
たった10数分ほどの時間であったが、数時間のように感じたこの無駄に集中したこの時間を返してくれ、と、そう思ったわけである。
この究極を乗り切れば、やはり、空腹もおさまり、すっかり忘れ作業に戻れることになるわけだ。

今日の作業用BGM

シューマン/子供の情景 1.見知らぬ国

 

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