bow's Design(ボウズデザイン)

水たまりの写真

日記「そういう…やつ。」

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ちっ、こいつ、何を言ってんだ。
いつも通り、にこにことしながら受け答えしている瞬間、その言葉のニュアンスを気に入らなかった僕の腹の中では、そんなことを思っていたのだが…いや、待てよ、ニュアンスは僕にとってはひどく不味いものだが、この方向性の言葉はこれまでに聞いたことがなかった。
相も変わらずぶっきら棒でひどく不味い物言いだが、理解ができたときに、こう思えたのだ。
「どうも。」
腹の中で静かに感謝の意を。

幾度この物言いに反吐が出そうになったことか。
幾度とその物言いに、糞不味くて毒まみれの皮肉でも言ってやろうか、と思っていた。
理解ができた、というのは、これまでの時間を辿ってみたときに、噛み合わないピースが突如として現れた。
その瞬間がさっきのことだった。
ああ、こいつというのは、こういう人間なのだ。
感情的に自分を動かすことも時には大事、というか、感情的というのは予期せず爆発するものだから、まあ、ゆっくりと見る、ということは大事なことのなのかもしれない。
人はどう思うかは分からないが、まあ、愛嬌のある人間だ。
彼のささやかな労いの言葉だった。

若い頃、というのは、どうやらちょっとした言葉に傷つきやすいようなもので(そういうものだ、と思っているが、僕だけなのかもしれないが。)流れから、こんな言葉を思い出した。
「期待をしていない。」
こんな言葉を発してくる人間は僕にとって嫌な奴で、接するのもいちいち構えてしまう糞野郎だった、かつての話、だが。
こういうぶっきら棒で不味そうな言葉の中にも、その人物像が分かってくると見え隠れするものが見えてくる。
それが分かった時、ただただ冷たくて、鋭利に尖った刃が、温かく優しいものに変わることもある。

さて、最後に。
とある場、でのことだった。
ドレスコードのある華やかな場であった。
この煌びやかな場所に、下品な色と模様のセットアップの男が近寄ってきて、携帯電話を渡し、撮ってほしいと言ってきた。
まあ、断る理由はなく、もちろん、と彼の方へ電話を向けた。
画面の中と、画面の外にその被写体はいるわけだが、何か面白おかしくポーズを取り、表情も決めこんでいる。
ああ、そういう時代だ、あることだ、でも、まあ、きめーよ、おめーとか思いながら、ボタンを押した。
携帯電話を渡し、プレビュー画面で自分の映り具合をチェックしてるようだが、表情をみるとどうも納得がいかないようで、再度撮ってくれ、という。
次の写真もどうやら納得がいかなかったようで、角度の注文が入る。
それでもダメだったようで、次は光についての注文が入った。
にやけを抑えるのに必死だったが、あちらは今日の奇跡の一枚を撮るのに必死で、フォトディレクションというよりは師弟関係に近いように思えた。
その甲斐もなく、結局のところ、良いや、とその場を去っていった。
なぜおめーのSNSを飾るための自撮り写真を頑張って僕が撮らないといけないのか。
まあ、面白い時間だったわけだが。

この師弟関係の様子を誰かシャッターを切ってくれてはいなかっただろうか。
この煌びやかな場所で二人が必死に師匠の写真を撮っている姿を分かっていたかは別として、美しい写真になったのではないだろうか。
あと師匠、その変な顔とポーズ、気持ちが悪いからやめといた方が良いと思います。面白くもなかったですし。。。

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