背後から僕の右肩にゴツンとぶつかって、よろけながら飛んでいく何かが通り抜けた。
間髪入れず、僕の肩付近を弧を描き、ものすごいスピードで通り抜けた。
一瞬の出来事に少しだけ動揺したのだけど、前方を見ると蝉と鳥だった。
捕食しようとする鳥と捕食されまいと必死に逃げる蝉。
かなり焦っていたのか、肩にぶつかったのは蝉。
ぶつかった後、よろけたのだが、なんとか体制を整え逃げ切ったようだった。
肩にぶつかって体制が崩れたのは、蝉にとって誤算だったのかもしれないが、
運命を左右した出来事だったのかもしれない。
鳥の軌道はきれいな円を描いていた。
僕にぶつからずにそのまま進んでいると、きっと捕食されていたに違いない。
鳥と蝉の交点がわずかにずれたことによって、蝉は間一髪逃れることができた。
鳥はそのままの軌道で速度が緩やかに落ちたところで、軌道を変え違うポイントへ飛んでいった。
交点がずれることによって事態は好転した(もうええわ・・・)。
さて、面白かったのはその光景だった。
蝉が必死に捕食者から逃げる様。
彼らにとって生死を分ける出来事だが、その光景と子どもの頃よくやった遊び、
鬼ごっこを思い出した。
鬼にターゲットにされ、執拗に追いかけられるのを撒こうと必死に走る光景。
この光景とリンクした。
小刻みに後ろを振り返り距離感を確認しながら、必死に鬼から逃げる様を思い出し、
その光景が頭に浮かび、思わず吹き出してしまったのだ。
土の砂を足が忙しく鳴らす音が聞こえてくるようだった。