美しきものとは心を動かされる。
美しきオアシスを目の前にした時、人々は心を動かされるだろう。
空想であっただろう、幻の光景を発見した時のようにである。
しかし、現実とはこのオアシスとは見せられた景色である。
煌びやかな中を幸せそうに人々が駆けている光景とは理想が生み出す景色である。
実体とは光の塩梅で泥水を透き通らせて見せられた美しき景色。
空間の景観を守るために囲いを作った中で見ているものである。
対岸では泥水をすすり喉を潤す者がいる。
あの地では、ならされていない地の中、忙しく駆ける光景こそは現実。
その地で跳ねる泥水の中に見える光にオアシスが映り込む。
しかし、それは刹那の如く。
見られることなく泥水へ還りいく。
泥水とは泥水。
はりぼての美しき水とは、囲いをいずれ浸食し、泥にまみれる。
作られたオアシスとは時限。
理想なる景色は胸に、泥にまみれようではないか。
くたくたの、粗い息づかいの中、視界に映り込む泥水を握りしめ、
瞳には光を宿しながら、前を向き笑みを浮かべようではないか。