bow's Design(ボウズデザイン)

夕焼け 写真

日記「蟻と蟋蟀」

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例年に比べて今年はとても季節の移り変わりを早く感じる。
時計のさす時間に対して、もう辺りは暗くなっていて、秋の虫の演奏がちらほらと聞こえてくる。
とうはいうものの、今夜はとても蒸しっとしていて、汗がだらだらとしたたり落ちてくる。
袖を捲し上げ、かっとなった表情を浮かべ、ベンチに座り込んだ。
両の手をベンチにつき、その勢いのまま頭を後ろに放って首のブレーキがかかったところで、再びかっとなった表情でぐっと目を瞑ったら、額から流れてきた汗が二、三、瞼をつたっていった。
酒をやる人はごくりとやりたくなる瞬間であろう。

私はといったら下戸な故、手持ちの缶コーヒーをぐいとやって、くーっ!なんて喉越しを感じながら、重たい上半身を両手で押し上げ、勢いに引っ張られる上半身を自由になった手を折り曲げ、両肘を太腿に押し付け踏ん張る。
ブレーキがかかって前屈みの姿勢が安定したところで、真っ白になっていた瞼の中を開けてやることで、目に映るのは規則正しく敷き詰められたレンガの地面。

じぐざぐした素材と、規則正しくあらわれる目地の道を淡々と進んでいく蟻の姿が見えた。
残業かい??
こんな遅くまでご苦労なこった、無理しないでおくれよ、ほどほどにな、また明日があるからさ!
なんて、目で追いかけていたら、茂みの方へ消えていった。
いやあ、生き物ってなあ強いやね、見習わなくちゃならねえ、辛いだ、苦しいだ、悲しいだ、疲れただ、まるで口にしやがらねえ。
いやあ、恐れ入った、参りましたよ!と、どこからかやってきた江戸っ子の親父が頭の中で煩くしゃべってる。

全くだよ、なんて顔を前に戻したら、街灯の灯りの淵の付近で重たそうな体をどしどしとした足取りで岐路に着こうとする背広姿の細身の男の姿が見えた。
だんなあ!体壊さないで頑張っておくれよ、また明日があるしね、ゆっくり休息をとることを忘れないでおくれよ、また明日があるからさ!
またどこからやってきたか分からない江戸っ子の親父がしゃしゃりでてきてがなってやがる。
そんなとき、秋らしい涼しげな風が吹いた。
街灯のスポットライトから抜けていく彼の横顔は、少しばかり穏やかに映ったように見えた。
街灯を潜り抜けてた男の後姿を追いかけた。
その先には、温かな住まいの灯りが見える方へ消えていった。

今日の作業用BGM

Sorry Doesn’t Make It Anymore / rah band

 

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