bow's Design(ボウズデザイン)

小銭入れの写真

日記「ノスタルジア」

広告

どの本だったか忘れたが、人生には捉えがたいノスタルジアが伴っている、と綴ってあった。
ひとつ年を重ねれば、ひとつ前のことを思い出し、懐かしむ。
またひとつ年を重ねれば、またひとつ前のこと、ふたつ前のことを思い出し、懐かしむ。
ああ、あの頃は苦しかった、辛かった、嬉しかった、楽しかった。
こんな回想の繰り返しをいつの年からやっていただろうか。
それも年々間隔が短くなってきているような気がする。

写真は数年前に買ったワッフル型の小銭入れ。
チャックの部分が壊れてしまって、使えなくなってしまった。
だけど捨てれずに置いたままだ。
思い出というのはなかなか簡単に捨てられないものだ。

集中力がきれて、椅子に深くもたれこむ。
何をするわけでもなく、ぼーっとする。
手の届くところには、僕の最近の思い出箱に目がいく。

思い出の品をとり、回想の時間。
あれやこれやと、良いことも悪いことも、思い出す。
はじめは感情が揺さぶられることもあるのだけれど、だんだんとそれはなくなっていき、最後にはぷっと吹き出すようになってくる。
コーヒーにクリームが溶け込んだとき、この品はもう形として僕の手元に必要ではなくなる。
それでも、捨ててしまうことは少しだけ後ろ髪が引かれるような思いもあるのだけれど、そっと捨てるのだ。

形がなくなったとしても、僕の中に確かに存在する。
これから、それを思い出すことがなくとも、僕の色となるのだ。

アシタカとサン / 久石譲
「もののけ姫」より
Soprano Saxophone : sumika

広告
 
ページのトップへ