とある人物のポートレイトの撮影。
被写体となる人物は厳格な人物という情報を得て、
緊張感が高まる。
その情報に嘘はなく、
凛々しいまゆ、鋭くそれることがない眼光。
口数は少なく、余計なおべんちゃらには耳を
傾けない。
椅子に腰掛けてもらうこと以外、
要望を出さなかった。
睨み合い。
「なんだ??」
「なんだ??」
この人物の本当の表情を撮るため。
その瞬間まで、シャッターを切らない。
緊迫した空気はこの空間すべてに広がっている。
この空気に耐えられない人物もいるほど、
重たい空気が二人の真ん中から広がっている。
周りから「早く!」などと、喉元まで出かかっている声が
聞こえてきそうなほどに。
恐怖や重圧、我慢、苛立ち、いろんな思念が入り混じり
カオスな状態になったとき。
シャッターの音が聞こえた。
「許した。」と、写真家の人は言った。
とある写真家のドキュメンタリー番組のお話。
この二人の無言の対話。
「許した」と思った瞬間の表情を撮った写真家。
すごい稚拙な一言でまとめてしまうけど、
すごいな、と、格好良いな、と思った。