教室が何やら賑やかだ。
何事だ、と教室の中を覗いてみると、
生徒たちが椅子取り合戦に興じて楽しんでいる。
懐かしい光景に立ち止まってしまい、しばし観察することにした。
ずだずだ、と床を踏み鳴らす激しい音が室内に鳴り響く。
椅子を取れなかったものは悔しがりながら輪から出ていく。
再び曲が鳴り出し、カーニバルの再開だ。
旋律の中に吐息が聞こえる静寂。
笑みは消え、目は鋭くなり、椅子を中心に輪を描きながら隊をなす。
運命を決する闘いに挑む者のように、戦士たちはリズムに合わせて舞う。
曲が終えるとわっと声を出し椅子に向かって突進する。
突き飛ばされて転ぶものが絶望の表情を浮かべ、椅子に向かって手を出す。
塵積もった埃が舞う視界の中、椅子にどすんと座り込んだ者の歓喜した様子が見える。
愉快な遊戯は、椅子が少なくなるほどに、輪は狭まり、闘いは苛烈さを増す。
最後の椅子を巡っての決戦がはじまる。
幼少期のあの時の光景が少し蘇ったようだ。
あの小さな闘いは、子どもたちにとっては本気の闘いであったのだ。
僅かなノスタルジーに浸りながらその場を去った。
勝者の決着の大きな歓声を背中で感じた。
校庭にあるりんごの枯れ木はもう老年の木でありもう実がならないようだ。
かつてはたくさんの実を鳴らせ、多くの者に囲まれたことであろう。
この木はおそらくはこのまま、朽ち果てていく。
この木はただの景色となりて、この前に立ち、過ぎ去りし時に思いを馳せる者とは、私のようなおいぼれくらいであろう。
木に手を置くと静かな緩やかな息吹を感じる。
かつての力強い鼓動は感じられない。
この木は大きな役割を終えたのだ。
地の肥料となり、新たな何かを育む礎となるだろう。

思考的実験「過ぎ去りし光景の輪」
bow’s internet shopping street
bow’s Townにある商店街、bow’s Internet Shopping Street。
パン屋さんや、和菓子屋さん、服屋さん、雑貨屋さんなど、たくさんのお店が並ぶ商店街。
屋台も訪れ、活気があって賑わいのある楽しい商店街。