数日見なかった六年生が登校の待ち合わせ場所に久しぶりに姿を見せた。
談笑をする光景はよく見たものだが、ちょっとだけ恥ずかしく、自分から話しかけるのが照れくさかった。
僕に気付いたお兄ちゃんは「はい」と言ってお土産をくれた。
突然のギフトに驚き、嬉しかった。
登校をしながら修学旅行の話を聞いた。
もらったお土産の笛を吹きながら。
今でもこの独特のにおいを覚えている。
朱色の笛で、塗料なのかきつい独特のにおいがするのである。
教室内では笛の音が鳴り響く。
みんな同じ笛を持っているのだ。
少し疑問に感じたのだが、自分が修学旅行に行った時にそのことを思い出す。
そういうことか。
お土産屋さんにはいろんなものがあって目移りするくらいだったが、予算と相談した結果、この笛に辿り着くようにできている。
修学旅行期、この笛の出ていく数は相当だったのではないか。
そして隣で朱色の笛の音がやかましく鳴り響く。
校舎の遠くからも笛が鳴り響く。
代々受け継がれている風習である。