bow's Design(ボウズデザイン)

endless trip イラスト

date | 2020.2.22 イラスト「倦怠感」

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おそらく、時刻は0時に差しかかろうとしているところだ。
赤色の神戸大橋は灯りに照らされ、橙色を帯び、美しく、景色から立体的に浮かび上がるように佇んでいた。
アーチ型の梁をくぐっているところ、今日ここを何度潜ったことかと一日を振り返った。
ポートライナーの一人がけの狭いシートに足が上手くおさまらず、窮屈に座っていたが、足が棒のようになっていたので、お行儀が悪いが足を投げ出し、だらしなく座っていた。
幸いなことに、この最後尾の車両には僕以外誰も乗っておらず、贅沢な気もした。
しかし、いつ見ても同じ表情を見せないこの景色は、何度見ても飽きないものである。

三ノ宮に着いた頃、おそらく0時10分くらいを指していたと思う。
そのままミントの手前にあるエスカレーターを下り、バスターミナルの側にあるエスカレーターを下り、阪神電車の駅へと向かった。
電光掲示板を歩きながら念の為視認したところ、誤算があった。
最終まで残り二本の電車は石屋川止まりだったのだ。
あまり手に出したくなかったが、携帯電話を取り出し、慣れない操作で急いでJRの時刻表を確認した。
その頃丁度、最後の二本のうち一本が発車したところだった。
さて、最終までには多少の時間があった。
改札を潜り、大阪方面へ向かうエスカレーターを昇り、折口の壁面を握りこぶしで軽く小突く。
それは合図なのだ。
待合室に腰掛けて本を読みながら電車を待った。
おそらく体内時計では30分を指す頃だろう。
この感覚は割と正確なようで、ポケットから携帯電話を取り出すと1分の誤差だった。
そして向かっていることを知らせる合図を送った。
先ほどの合図と少し違うのは、握りこぶしの親指を天に突き立てる。
誰もが馴染みのあるサインのように。

それを終えた時、腿に携帯電話の振動を感じた。
今日は集まらないという知らせだった。
込み上げてくるものがあったが、少々ほっとした部分もあった。
正直なところ、15分ずつ進行が遅れていた。
集合場所にはぎりぎり間に合うか、少し遅れるかを懸念していた。
余力は残していたものの、疲労と睡魔はそれなりに迫っていた。
まあ、そういうものは、最中になると忘れてしまう感覚ではあるが。
感覚や感情とはそういうものなのだ。

通話をしながら、人々の波を逆流し、再び改札へ向かった。
通話を切り、下りのエスカレーターに乗ったところ、その反対側には狭い管を通るかのように、激流の波が激しい音を立てながら過ぎ去っていく。
その波がおさまった世情の波に揺られながら、僕は帰路へと着いた。
当然に帰る電車は既に終わっていて、ふらふらとした足取りでぼーっとしながら、誰もいなくなった神戸の中心部を家の方面へ向かって歩いていた。
見慣れた景色ではあるが、夜のこの辺りは快適で、ストレスを感じることなく歩くことができる。
空いている店はないが、この辺りの店は特段入りたいところもない。
ただ、ゆっくりと、静かに景色を見て歩けることが幸せと思える。
これが本当の姿、と思うのか、眠りにつき静かになる一時が街にもあるのだ、と思えることなのか。
犬の遠吠えも鳴り止み、家々の灯りも次第に消えて、昼夜逆転をした生き物が目を覚まさせないように、夢を見させてくれるように、ひっそりと、こっそりと動き出す音を子守唄に、目を覚ますと鳥の囀る鳴き声が聞こえるような。

コンビニに入って、缶コーヒーを買った。
一服というやつは、10代の頃に、職人さんの中で教えてもらった文化だ。
怒鳴ったり、小突いたりしてくるかと思うと、一服の時となると缶コーヒーを無口で無表情で渡し、地べたにどさっと胡坐の姿勢で座り込み、誰が言うわけでもあなく、無口であるのに輪になり座る。
話を始めたかと思えば、キャッチボールが続くわけでもなく、その変わりに、吹いた煙が輪の中に漂い、消えていく。
それは会話であるように。
そして、その時ばかりは、やいのやいの言うわけでもなく、優しい声をかけてくれるわけでもなく、穏やかな表情をしている。

店を出る頃、トラックの運転手のお兄さんが商品が積まれた大きな荷台を搬入するところだった。
横切った時に、視界に映った表情は爽やかで活き活きとしていた。
目に輝きがあって、生命力を感じた。
ああ、この人は生きているのだ、生きようとしているのだ。

数日前から倦怠感にかられていた。
そんな中、忙しい時間を潜り抜けるのは、少々ストレスを覚え、次第にやる気がそがれているところだった。
そんな表情はとても眩しく、嫌悪感をも抱く時があるものの、でもそういった人々が僕に力をくれるのだ。

この幻の中を、この幻の中を実体として、この目を狂わす煙を振り払うわけではなく、進むべき道が見えているように迷いなく歩む一歩に、僕は力をもらうのだ。
鳥の囀りが耳に届くように、カエルの合唱が耳に届くように、優しい風が吹くように、幻のもやの中を突き刺す温かい光があることを見逃さないように。
そうやって歩む続ける。

Endless Tripイラスト

Endless Trip

イラストレーション「Endless Trip」

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