卵焼きが食べたい。
弁当の蓋を開けて、まず箸でとるのは、
卵焼きだった。
赤いウインナーや、ミートボールでもなく、
メインディシュでもなく、まず箸でとるのは、
所狭しとパーティションで区切られたエリアで
押し合いへし合いをする卵焼き。
これぞ、私のお弁当の食べ方の流儀、なんてね。
遠足や野外活動で食べるお弁当は本当に楽しみだった。
お弁当の色のバランスを整える卵。
押し合いへし合いをしながらも、後からやってくる
おかずのスペースだって、押し合いへし合いしながら、
あけるさ。
どんな色のおかずがやってきたって、
究極のバランス感を持つ卵焼きは、
華やかさは負けつつも、縁の下の力持ち。
全体を輝かせるために、卵焼きは活躍する。
楽器で言えば、リズム隊だ。
幾つかにスライスされた切り口の渦は、
同じようだが、それぞれ個性を持つ。
その渦は作ってくれた人の思いが見えてくるようだ。
目を渦の中心から外にやっていくと、
菜箸から姿まで見えてくる。
朝の忙しい時間。
お弁当を作るのはなかなか大変。
最近はお手軽に調理できるものが増えたから楽になった。
チンしてレイアウトしていけばそれなりの彩りを持たせ、
美味しいお弁当が作れる。
卵焼きは一手間必要だ。
今日お弁当を開いたら、卵焼きの渦を見てごらん。
作ってくれた人の、姿が君の目だけに、見えるかもよ。
そんなことを思った絵本でした。