鑑賞に訪れた人々の会話する声。
音源はあちらこちら。
それぞれの音量はさほど大きくないが、それらが重なって、低く重めの音が広がっている。
空いた席に腰掛けた。
開演まで、少し余裕をもって向かったので、わりと理想の席に座ることができた。
両の手を頭の後ろにやって、リラックスし、幕が閉じられた舞台を眺めている。
そうしていると、空いていた席がチラホラと埋まり、あたりを見回すと満席になっていた。
開演の合図が鳴った。
幕が開いた。
コンダクターが指揮台に向かって歩いてくる。
客席に向かい、一礼。
指揮台に立ち、奏者に無音のコンタクトをおくり、指揮棒をゆっくりとあげた。
会場は一瞬無音。
真空状態の中にいるように。
指揮棒が小刻みに、上下に、ゆっくりと早く、ゆっくりと大きく。
一定のリズムを刻み、低い音がメロディーを奏でている。
少しずつ、メロディーを奏でる楽器が増えてきて、壮大になってくる。
1曲を終えたのだろうか、静かになった。
客の咳払いが少し聞こえた。
一定の無音の時間が経つと、またゆっくりと音楽が始まっていく。
ここまで、わりとベースのメロディーは同じだが、小節によって様々な楽器が色付けをするようだ。
そして、この小節が終わり、無音に。
すると、これは弦楽器だと思うのだが、かなり高い音を出す楽器が一致の音を刻んでいる。
これは新しい展開が期待できる。
楽しみだ。
長い。
いつまで、この弦楽器の独奏が続く。
長い。
…。
なんにもはじまらへんやん〜!!!
心の中でツッコミを入れたら、目的の駅に着いていました。
あぶない、あぶない、もう少しで次の駅に出発するところだった。