bow's Design(ボウズデザイン)

猫 イラスト

突発的短編物語「俺はやはり黒猫であって、猫なのである。」短編小説

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猫のイラストレーション

吾輩は猫である。
いつぞやの住処に備え付けてあった自分の姿が映る道具には、黒い姿が映っていたのでおそらくは黒猫であって、視界に映る体や手足も黒のようだから、ほぼほぼそうであるに違いない。好きな時に眠り、好きな時に動き、腹が減ったら食べ、腹が減っても気が向かなければやり過ごし、居心地の良いところで大方眠っている、というのが大まかな一日の流れだ。いつしか世捨て猫になってからというもの、なんのしがらみもない自由気ままな生活のなんの変哲もない毎日を送っている。

猫 イラスト狩りに失敗しても、気の良い人間が食い物を置いてくれているから餓死することもない。まあ、食ってはいけないものをわざと置いておき、駆除しようすとする輩もいるわけだが…
いけ好かない猫がやってきてひと悶着することもあるが、まあ、ぬるい時間を過ごしてばかりでは鈍ってしまうから、たまには必要なことだろう。
俺の姿を見てはもの珍しそうに近寄ってきて気安く触ろうとする人間がいるが、ものの分別を知らない人間に触れらるのはご免である。

猫 イラスト

カシャカシャと音を鳴らせ、終わったかと思うと用済みになって存在しない存在になって、腹をすかしてるから出してくれと話したら、鬱陶しそうに飯を出し、長い時間出かけて帰ってきたかと思うと、異常な優しさで撫でられ、カシャカシャし終わるといつものご様子。
なんの代わり映えもしないこの空間に楽しみなどとっくのとうになくなって、いつもの定位置は外が見える窓際。ここは退屈しのぎには絶好の場所。木が揺れたり、草が揺れたり、車が通り過ぎたり、人が通り過ぎたり、窓が濡れたり。
眠たそうな顔をした猫がこちらを見て興味がないと言わんばかりに去っていく姿を後追いしたり。
おい、この、と手を伸ばすも見えない壁に阻まれて、後姿が遠くなって見えなくなっていく。
ちっ、となって体をうずくめていたら眠ってしまった。

猫 イラスト

毛を通り越し珍しく風を感じたので目を覚ました。固く閉ざされていた窓が小さな隙間が空いていた。窓を開けることにしたが、思い通りにいかず苛立ってしまい、連打で叩いてしまう恰好になってしまう。時折あらわれる野生感とは、身体能力のみでどうにかしようとするから、これが時には強いが、時にはうまくいかず、、、時と場合によって使い分けられると良いのだが…
こんな時本能的な部分は未だ残っているのであろうと思うし、それを呼び覚ます事柄というのはまだあったのだと思ったら、冷静になれて爪を上手く使って少しずつ窓を開けることができた。

 

吹きかける風を体の全部を使って感じ、誘われるように外に体を出し、いつものようにぴょんと跳ね降りた。
四方八方あらゆる音が聴覚を刺激し、眠っていた耳がぴんと立つ。
前足に味わったことのない感覚を感じ驚いてどんくさくその場を飛び跳ねたところ、風にあおられた草のようだ。
背中にまた味わったことのない感覚を覚え驚いてからだを思いっきり震わせたら昆虫だった。これを草だ昆虫だと理解ができてしまうのは、これは長い生命活動の情報が書き込まれた遺伝子による産物であろう。

 

重要な事柄というのは至って単純であって、それは遺伝子情報が教えてくれるから、それを抑えておけば、どこであってもどんな状況であっても生きていけるものである。
視線を感じる方へ顔を向けると、あの眠たそうな顔をした猫がこちらを見ていた。
興味がなさそうな顔をしてぷいとまた去っていく。
あの野郎、と全速力で追いかけるもまた姿を失った。
また理性を失ってしまった結果、ここがどこなのかまったく分からなくなってしまい、どこへ行けば良いか分からなくなってしまった。
疲れてしまったから眠ることにした。
やけに賑やかないくつもの声が近づいてくる。
薄目を開けてみるとこの辺りに住んでいるガキであろう、無邪気な笑顔で走って向かってきやがる。

 

純粋さとは良いものだが、この手の純粋さは危険なもので何をされるか分かったもんじゃない。そして相当にしつこい。
こういう時人間というのは潜在能力を発揮しやがり、厄介なものである。こういう時は知恵を使ってやるのだ。
ぴょんぴょんと高壁を乗り越え、念のためより安全な屋根の上へ上り、興味のなそうな表情を浮かべ奴らの様子をうかがう。
目の輝きは消えていないが、残念そうにその場を去っていく。
ばいばい、またね、なんて良く言う、ご免だね。

 

鼻がくんくんする。ちょうど腹が空いている。鼻が行く方へ体を持っていってこれだと思うものをかじってみたら、歯が通らないし、砕けないし、味もない。
あの広場で戯れているガキどもが食べているもののゴミのようだ。
全くどーいう教育を受けているのか親の顔を見てみたいものである。
吾輩は飼い主に厳しく教育を受け育てられたものだ。鬱陶しいことこのうえ無かったが、今になってみて分かることもある。こうなったいまとなっては必要のないものかもしれないが。

 

必要のないものはなくなっていくが、良き学びとは体に染み込んでいくものである。こんな食い散らかされた後を自身にとってなんの利益もないだろうに綺麗に後片付けをする人間もいる。こちらを見て何かを言っているが何を言っているか分からないから、興味のない顔をしてその場を去るものの、そんな姿は何やら印象深く脳裏に焼き付くものである。
俺たちがいつものように、いつもの場所をいつも通りに歩けるのは、彼らのような人間の行いによるものなんだろうな。

 

どすん!

痛っと聞こえる方に目をやると人と人がぶつかっていてもめていやがる。お前らは目がついておらんのか、退化したのか、それともただの阿呆なのか。次は躓いて転んでいやがる。どうやら彼らには学びや危機管理というものが備わっていないようで、関係のないものも関わると被害をこうむりそうでこわい。躓いて転んで痛いにも関わらず、手に持つそれを持ってパシャパシャしている。全くこんな阿呆の姿を見るのも辟易とするね。

 

したい時にする、食べたいときに食べる。もうお腹一杯なのに次々食べさせられるのは拷問であろう。しかも美味くもなく味もせず、大量に投じられるだけのものを、卑しく損だと言わんばかり摂取し続ける。
俺の目には忙しくしている手にはなーんにも映っておらず、奇々怪々で気持ちが悪い。なにもないのである。
本能が呼び覚まされてしまうスイッチを押され傀儡のように動かされていることに気付くのは、冷静になることのできるスイッチを持っているものだけである。今日あったことを振り返り悔いたり、恥じたり、悲しんだり、泣いたり、喜んだり、希望を見出したり。
俺は自由気まま。不自由なようで不自由でない生活。
居心地の良い所で過ごし、居心地の良いところで眠る。
眠ってばかりの怠け者。

 

そんな吾輩でも後悔することだってある。
親猫からはぐれてしまったこの子猫をどうやって親元に届けるか。子猫は人間に囲まれ親猫は身動きが取れない。まったくもって無神経なものである。所詮こやつらはこの状況をステータスのようなものしか見えていない。さてどうするか。一人の人間がこちらを見、目があった。お前を信用するぞ。どうとでもなれ。
かつてない速度で子猫に向かって走り、間違いのないように口にくわえ勢いを殺さずその場を駆け抜けた。子猫となめていたが、重く顎が抜けそうである。

 

物理法則に沿って大きく旋回し雑に親猫のもとへ届け、興味のない顔をしてその場をそそくさと去っていった。
まったく、ちゃんと目を離さず見ておきやがれ、なんて小言を言うも、一人で子を育てるのは難しいのは見れば分かる。
後ろは見ない。こっぱずかしい。笑みを浮かべてしまった。体が勝手に動いてしまったとはいえ、またひとつかかっていた呪いを乗り越えることができた、、、。払うことができた。いかんいかん、興味はない、無駄なこと、世の摂理、興味はない、自分さえ安全であれば…どうしようもない。

 

責任持てません、勝手にしやがれ…反射的に後ろを振り返ると、さっきの人間がこちらを見ていた。俺の意図が分かったのであろうか。
良い奴ばかりではないが、悪い奴ばかりでもないようだ。
これだから…
こんなにも皆の思いはあちらこちらと飛び交っているのに、面白いほどにすれ違っていく。気にすらされていない。まるで、針に糸が上手く通らないように。上手く通すことができる道具があるというのに、思いとは伝わらないものなのだ。奇跡的というのだろうか…。
しかし、姿、形や思いが違えど通じ合える奴らもいるということか。
いかんいかんくだらないことだ、興味ねえ、とあくびをしてその場から去ろうとしたら、目前にあの眠たい顔の猫がこちらを見て、あくびをして興味のない顔を浮かべ去っていった。
あの野郎、と後姿を追う。

 

吾輩は猫である。
最近は毛並みも悪く、泥もまとい汚い世捨て猫。
今日は今日とて、かったるく、自由気ままな黒猫さ。
今はあのいけ好かない白猫に
一発ぶちかましてやろうと走っているところ。

 

気に入らないことも多々あるが、
ま、悪くない人生だ。

 

イラストレーション「〜シロとクロ〜猫のイラスト」

 

今日の作業用BGM

スチャダラパー+木村カエラ / Hey! Hey! Alright

 

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