日記「そうか、冬だものな。」

コンビニの自動扉がぎこちなくガタガタと音をたてながら、ゆっくりと開く。
そろそろメンテナンスが必要でない？？とか思いながら、開ききるのを入り口で立ち止まり、開ききってから外に出た。
びゅっと強めの肌寒い風が吹いた。
両の手を両腕に交差させながら一歩歩いたところ、カラカラと勢いよく回転しながら、誰かが捨てたフィルムの包みが転がってくる。
それを見ていたら、なんだか寂しくなった。

ふと、思い出す。
健気で献身的なその姿に愛おしささえ覚えた。
なんという無垢で曇りのない純粋な表情をこの瞬間にしているのか。
近くを通り過ぎた人の表情というのは、なんとも暗く、希望に満ちていない。
不満や鬱憤が溜まっているのか、それどころか、あたりを見る表情は、蔑みや、軽蔑の眼差しさえうかがえる。

しかし、そんなことには目もくれない。
そんな表情を目で追っかけていた。
温かく、そして優しい。
柔らかくて、手触りの良いウール地のものに優しく包まれているようだ。
幸福感さえ感じた。

カラカラとフィルムが転がる音が聞こえてきた。
少し先のところでフィルムが止まった。
それを見ていたら、なんだか寂しくなった。
だけど、そうなのだ、刹那、ということはよく知っている。
きっと冬の知らせなのだろう。