夜の時間のここへは、もうだいぶんいっていない。
ある時は、とりあえずあの場所へ。
昼も少ないが、夜になるともっと人はいなくなるし、
静かでお気に入りの場所だったが、もうそこへ行かずとも
解決できることが多くなった。
ただ、ぼけーっと月明かりに移されたゆるりと波打つのを
見ている贅沢な時間を過ごしたいものだ。
夜が更けていくと珍しく人工的な灯りも少なくなり、
空を見上げれば、本来の空に近い深くて濃い青色の
グラデーションが広がり、その上にセンスよくレイアウトされた
星空の色の発色具合といったら絶妙だ。
ここから見える水平線には、激戦を繰り広げる摩天楼が、
夜明けとともはじまる闘いの前の休戦中。
奇襲をかけるものはおらず、正々堂々としているのは、
素晴らしいことだ。
そうなのだ。
少し落ち着いて考える時間が人には必要だ。
上ばかり見るのではなくて、せっかくいろいろなところを
見ることができる目を持っているのだ。
一体何のために。
数匹の狼の遠吠えが、遠くから聞こえてきた。
だが、少し寂しそうである。