ことね
新しい季節の訪れを感じるが如く、
それが季節ならば漠然とした焦燥や不安などといった感覚を除いては
不穏は感じず。
得たいが知れず、実態もなく、未知であって、分かるようで分からない、
そうであるにも関わらず、琴の糸のいずれかの音の糸が敏感に触れ、
不協和音が身体のすみずみへと響き、手足が震える。
見向きもしなかったものを見る、輪郭を捉えたならばそれをいくらか知り、
さらに奥行きがあることを知り、全体像を理解する。
その現象こそは人たる所以。
その音色を操ることができるのも人たる所以。
言うならば、初めての季節を感じ、四季があることを知り、
それぞれの季節の特徴を知り、季節を語り、
誰もが知る季節の音を互いに奏でる。
幾度も巡れば、その音に深みがあることを知り、
その音が自分にしか聞こえないものもあって、
即ち、そういうことであって、その音を聞くことができたもののみが、
表現できる音で、同じようでいてそうでなく、全く違うようでいて
何故か共鳴したり理解したり、共感したり感動したりするのは、
互いの歩んできた道は違えどその歩んできた道のりに
想いを馳せることができるからであろう。
秋虫の音と共に釣瓶が落ちる音が聞こえた気がした。
腕に冷たい風を感じたならば、新しい季節のはじまり。
静寂に少し不安を感じるが、いやいや、新しい季節の始まりだ!と
無理に気張ることもないわけで、ともするならば、
いかが過ごすのか、とまあ、あれやこれやと考えながら歩いていりゃあ、
この季節の壮大な旋律の一音くらいは彩ることができりゃあよ。