少し日が落ちるのが早くなってきたような気がする。
夜に向かう色のグラデーション。
濃い色域に近くなるにつれ、秋の昆虫の鳴く音があちらこちらから聞こえてくる。
僕の心のうちとは反対に、今日の空はいつもより広く穏やかだった。
空との無言の対話。
小さく灯った苛立ちの火がゆっくりと消えていく。
中学生だった頃、部活に向かう放課後の校庭を歩くときに、音楽室からいろんな楽器の音が聞こえてきた。
吹奏楽部が練習をしている。
ひとつのテーマに沿っていないあらゆる方面へ飛び交う音は、次第にひとつのテーマを持ち、意識が一点に集まり、だんだんと重なっていって、だんだんとひとつの音楽になっていく。
そんな過去の思い出が情景として思い浮かぶ。
秋に近づき、草むらでも虫の音楽隊が音楽会に向けて練習をしている。
秋の虫の音楽隊による音楽会は、いつも人々の話題になる。
優しく滑らかな旋律で美しい。
草木や緑もサラサラと音を奏でる。
いつまでも鳴り止まない美しき自然が奏でる演奏に、名残惜しさを抱きつつも後にする。
まだ完全ではない練習の段階にも関わらず、魅了されてしまうハイレベルな音楽隊だ。
告知なき毎年話題になる音楽会。
行きそびれることがないように、耳を澄ませておこうと思う。