神戸三宮にある就労移行支援事業所JOTサポート神戸のパンフレットのデザインをするにあたって描き起こしたコンセプトストーリー。
JOTサポート神戸の皆様との触れ合い、空間の雰囲気や、体験させていただいたこと、見たことを物語に綴りました。
「とあるお花畑。」
「そのお花畑に咲く一輪の黄色いお花を太陽さんは眺めていました。」
「おや??
黄色いお花のところへ蝶のおちょうさんがやってきたようですよ。」
「おはよう♪
ベラさん、素敵な黄色のお花。」
「おはよう、おちょうさん♪本当??」
「本当よ!
素敵な黄色、羨ましいわ!
それに比べて私の黄色は地味だもの…」
「おちょうさんの黄色、すごい素敵だよ!
遠くからでも目で追いかけちゃうほど!
ほらあお君も言ってる♪」
「ありがとう!
今日は気分が良いわ♪
遠くまでお出かけしてくるね。
さようなら、ベラさん、また来るね。
あおちゃんも大きくなったら、一緒にお散歩しましょうね♪」
綺麗なおちょうさんに褒められてベラさんは嬉しい気持ちになって、らんらんと揺れました。
「ぼくたちは蟻さん探検隊ー♪
すっごいお宝見つけるぞー♪…」
すると、足元がなにやら賑やかになってきました。
「やあ、ベラさん、ご機嫌いかが?」
賑やかな正体は蟻さん達でした。
「ほら、体が揺れてる、気分が良いよ♪
蟻さん達も元気で楽しそうだね!」
「元気いっぱいで楽しいよ!」
「僕たちは探検隊なんだ!」
「すごいお宝を見つけるんだ!」
「みんなに持って帰って喜ばせてあげるんだ!」
「素敵な夢だね!ぼくも応援しているよ!」
「ありがとうベラさん!
発見したらベラさんにも持ってくるね!」
蟻さん達は楽しそうに元気に冒険へと出かけていきました。
徳なっていく蟻さん達の姿を追いながら、ベラさんは思うのでした。
「大きくなって綺麗に咲く花になるのが僕の夢だった。
蟻さん達に力を貰ったな。」
ベラさんは少し強く揺れました。
そこへミツバチのミツ君がやってきました。
「やあ、ベラさん、素敵な香りのする蜜を僕に分けてくださいな。」
「こんにちは、ミツ君。
ええ??ぼくので良いのかい??僕より良い香りのお花さんはたくさんいるよ。」
「いろいろ回ってみたのだけれど、ぼくは君の香りが一番好きだよ。」
「なんだか恥ずかしいや。
ぼくので良ければどうぞ♪」
「ありがとうベラさん♪
みんな喜ぶよ!
また蜜を分けてね!」
「ぼくので良ければいつでもおいで♪またね!」
ベラさんは自分を好いてくれる人もいるのだな、と嬉しくなりるんるんと揺れました。
すると雨が降ってきました。
久しぶりの雨にベラさんは喜びました。
少し喉が渇いていたからです。
そこへびしょ濡れになったスズメのスズさんがものすごい勢いでこちらに飛んできます。
「ベラさん、こんにちは♪
少しここで雨宿りさせてくださいな。」
「スズさん、こんにちは♪
大変だったね!
どうぞ雨が落ち着くまでここで過ごしてくださいな。」
「ほんと、買い物の帰り急に降ってきちゃって。
雨宿りできるお花畑があって助かったわ。
あんまり濡れちゃうと風邪をひいちゃうわ、
まだ子どもたちが小さいから病気できないからね。」
「そりゃあ大変だ!
スズさん、ほら、雨が止んで晴れてきたよ!
小さな子ども達が心配しているから、早く帰ってあげなきゃ!」
「ベラさん、ありがとう!
助かったわ!
また子ども達と遊びに来るわね!」
スズさんはそう言って勢いよく飛び立ち、ベラさんの周りをくるくる回って帰っていきました。
ベラさんが小さくなっていくのを見てベラさんは思うのでした。
「ここに咲いていることで誰かの助けになるんだ。」
力強く揺れました。
するとせわしく草を掻き分けこちらの方向に向かって走ってくる足音が聞こえてきました。
トカゲのトカちゃんが必死に早口でベラさんに助けを求めています。
「ベラさん、ぼくをかくまって!
ぼくの食べ物を狙って蛇のスネさんにしつこく追われているんだ!」
「なんだって…!?
そいつは大変だ!
葉っぱの上は見つかっちゃうし…
そうだ!ぼくの顔の後ろに隠れて!
急いで!くるよ」
舌をしゅるしゅるさせながら、スネさんはやってきました。
「こんにちは、ベラさん、こっちのほうにトカさんは来なかったかしら??
少しばかり話があってねえ…」
「こんにちは、スネさん、トカちゃん??
ぼくは見ていないなあ…。」
ベラさんは恐怖と頭の重さで体を震わせてこたえました。
「本当かしらねえ…
確かにこちらに走っていくのを見たのだけれど…」
スネさんは鋭い目つきでベラさんは睨みつけて言いました。
ベラさんは飲み込まれてしまいそうな恐怖にかられながらもこたえました。
「本当だよ!
ぼくは見てないよ!」
スネさんはベラさんの目をじっと見てしばらく沈黙しました。
「…
なら仕方がないわね。
邪魔をしてしまってごめんねさいね。
またね、ベラさん。」
そういってベラさんは帰っていきました。
ベラさんはほっとして大きく息を吐きだしました。
頭も軽くなっていることに気付きました。
「さっき道端で見つけたんだ。
宝物にしようと思っていたんだけど、ベラさんにあげる!
君の勇気で助かったんだ!」
「そんな大事なもの、貰えないよ!」
「いいんだ!
君につけていて欲しい。
怖くなって逃げてしまいそうになったら、君を見て思い出すよ。
本当にありがとう!またね!」
ベラさんは優しく体を揺らしました。
すっかり空は赤く染まっていました。
夜の虫のオーケストラに耳を澄まし、今日の出来事を振り返るのでした。
何かになろうとしなくても、自分でいることで、誰かを楽しませたり、喜ばせたり、助けることができるのだ、と。
花畑で美しく咲く花のように、ありのままの姿でいることが、誰かにとって輝く存在なのかもしれない。
きっと見つかるはず。
いや、すでに知っているはず、だから。