さっきあったことは、過去のもの。
そのときあったものは、さっきははっきりとあったのに、現在になったら、ちょっぴりうねうね、ぐねぐね、ぐにゃぐにゃして、ふわふわして生き物のように塊になって動きながら少しずつ遠くなっていく。
手を伸ばしてみても触れることはできず、避けたり逃げたりしているのではないのだけれど、手のひらにあったのに、風に吹かれて飛ばされるように、ふわりと何処かへ飛んでいく。
遠い所にいるもの、近いところにいるもの、消えそうになっているもの、たくさん浮かんでいる。
そして遠くなっていく。
そして絵画のように色がかすれていく。
形すら無くしてしまうものもある。
あらゆるところで過ごした時間の刻々は、とても楽しいものだが小さな寂しさ一粒の寂しさを感じる。
現在の物語の終幕が頭によぎるからであろう。
最後の花火が打ちあがり、いくつもの火の粉がゆっくりと落ちて消えていく。
それはまるで過去の記憶のように。
さっきあったことは、過去のもの。